クルマレビュー - Type1
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フォルクスワーゲン / Type1
1200L (1963年) -
- レビュー日:2023年10月29日
- 乗車人数:2人
- 使用目的:その他
おすすめ度: 5
- デザイン:無
- 走行性能:無
- 乗り心地:無
- 積載性:無
- 燃費:無
- 価格:無
- 満足している点
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1.ポルシェ博士の最高傑作
2.基本設計が1930年代なのに現代の道路を普通に走れる
3.扱いやすい低速型エンジン
4.狭さを感じない優れたパッケージング
5.意外と静か(ドアガラス5.0mm) - 不満な点
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1.現代の目で見ると大きいステアリングの遊び
2.高速域で顕著な浮き上がり
3.横風に対する弱さ
4.意外と小回りが効かない(大径タイヤ)
5.外形発生音が大きい - 総評
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●1930年代の技術が21世紀まで通用する凄み
世界に名だたる自動車エンジニアであるフェルディナント・ポルシェ博士(1875-1951)の数ある傑作の一つで西ドイツだけでなく世界中のモータリゼーションに貢献した大衆車「フォルクスワーゲン」に短時間ながら試乗する機会に恵まれた。
フェルディナント・ポルシェ博士は数々の自動車メーカーを転々としながら小型大衆車の必要性を説いてきた。
独立した後も、大衆車の依頼に基づいて試作を続けてきたが、マスプロダクションに繋がらずにいたところ、時の権力者による民衆に夢を与える政策の一つとして大衆車の開発の協力を取付けることに成功した。
権力者が提示した開発条件は下記の通り。
頑丈で長期間大きな修繕を必要とせず、維持費が低廉であること
標準的な家族である大人2人と子供3人が乗車可能なこと
(すなわち、成人であれば4人乗車可能な仕様である)
アウトバーンにおける連続巡航速度100 km/h以上
7 Lの燃料で100 kmの走行が可能である
(=1 Lあたりの燃費が14.3 km以上である)こと
空冷エンジンの採用
流線型ボディの採用
「この条件を満たしながら、1,000マルク以下で販売できる自動車を作ること」
であった。大変厳しい内容ではあったが、ポルシェ博士はそれまでに開発済の要素技術や日の目を見なかった大衆車プロジェクトで築いた財産を最大限に活用して開発されている。
1934年の契約から1935年の最初の試作車の完成を経て量産体制を整えていた1939年、第二次世界大戦が勃発して大衆車量産の夢はまたしても頓挫した。
―敗戦後、フランスにて独裁者に協力した罪で収監され、健康を害したポルシェ博士は1947年に釈放されて西ドイツに帰国した。ポルシェ博士は西ドイツの街中を走るフォルクスワーゲン達にさぞかし胸がいっぱいになったことだろう。
そして本国では1978年まで生産が続けられ、海外生産分ではは2003年までメキシコで生産された。フルモデルチェンジ無しで作り続けられた自動車としては今も燦然と輝く2152万9464台という記録を持っている。
改良を続けながらとは言え、1930年代の技術から生まれた乗用車が21世紀まで生き延びたことだけでもポルシェ博士の偉大さが伝わってくる。ポルシェ博士は独創的な技術を0から生み出すと言うより、既存の技術をうまく組み合わせて商品にする事が上手だったと伝えられている。フォルクスワーゲンもまさにその成果であり、当時の技術の中から使える者を上手に選択して普遍的な価値を持った大衆車にまとめ上げた。
●まとめ
試乗させていただいて、やはり1930年代に企画・開発された乗用車がこれほどまで普通に扱える事実に驚いた。最初の試作車が出来た1935年は2023年の88年前である。紆余曲折を経て量産された1945年は78年前、そして試乗車が生産された1975年ですら48年前なのであるが、これは本当に凄いことではないだろうか。
1930年代という自動車が富裕層の玩具から大衆の道具へ移行する重要な役割を果たした時代から不幸な戦争を経て、戦後復興の外貨を稼ぐ産業となり、開発途上国のモータリゼーションにも寄与し、1960年代以降は北米市場で優れたマーケティングによって小型車の可能性を拡げ、最後はファッションアイテムとしても認められていった。長い時代を経て受け取られ方や存在意義が変わるのはまるで長く歌い継がれる名曲のようでもある。
私は小学生の頃にフェルディナント・ポルシェ博士の伝記を読み、勝手に尊敬していたのだが、その伝記の主人公の最高傑作の一つと言って良いこの小さな大衆車に乗ることが出来たと言うことは本当に幸運だった。オーナーに感謝申し上げたい。
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